DOCTYPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD Compact HTML 1.0 Draft//EN"> お肌の?(クエスチョン)/防腐剤の必要性、安全性

A5 * 防腐剤はなぜ必要なのですか
 入っていても安全なのですか


1 菌と人の共存

いきなり大便の話しを持ち出して申し訳ありません。この例に見られるように私達の日常生活では菌と共存しバランスが保たれていることを最初に知っていただきたいと思います。
空気中にも存在しますし、皮膚にも菌が存在します。(常在菌と言います。)常在菌の存在が病原菌の繁殖を防いでくれている面もあります。


2 菌はお肌の守り神

表示指定成分については別途説明しましたが、代表的な防腐剤と香料について補足します。

1.皮脂
皮膚からは皮脂が分泌され皮膚の水と混じって皮膚膜ができます。
この皮膚膜が皮膚の表面をおおい、体に悪い物質の侵入を防ぎ、体の水分が蒸発するのを防いでくれています。
皮脂の主成分は脂肪酸のグリセリンエステル(脂肪酸エステルとも言います)ですが、分泌された後に細菌の酵素リパーゼによって脂肪酸とグリセリンに分解されます。
この酸の影響で人の肌は弱酸性に保たれています。

2.常在菌
皮膚には常在菌がいますが、そのなかには害を及ぼさず、病原菌の繁殖を防いでくれる定住菌と体力が低下した時などに病原菌となる通過菌(黄色ブドウ球菌、緑膿菌など)があります。
一方、皮脂に含まれる脂肪酸エステル、脂肪酸は菌をある程度コントロールする力(脂肪酸の方が強い)がありますので、通過菌の繁殖を防いでくれます。

3.炎症との関係
このように菌の存在がバランス良く維持してくれている時に私達の健康も保たれています。
アトピー性皮膚炎の方は皮脂の分泌が少ないので皮膚の菌をコントロールできず、黄色ブドウ球菌が繁殖して、炎症をさらに悪化させる傾向にあります。
皮脂の分泌が少なく酸性が弱いので、アルカリ性の洗浄剤(石けんなど)と接触すると酸性に戻るのに時間がかかり、脂肪酸の抗菌効果を上手く活用しにくくなります。
フケ症は頭皮のなかの菌のバランスが崩れ、フケ菌が異常に繁殖して起こることも主要原因の一つです。


3 防腐対策の必要性

常在菌の中には体の抵抗力がなくなった時には病原性を発揮するものもありますのである程度コントロールしておく必要があります。
原料から始まって製造中の菌汚染(一次汚染)と使用中に混入してくる菌汚染(二次汚染)があり、それぞれ対策が必要です。
一次汚染に対しては加熱殺菌、酸化エチレンガス殺菌、殺菌剤などの対策があり、二次汚染に対しては防腐剤の使用、密閉容器の採用などの対策があります。
化粧品の種類により、難易の差があり、対策も異なりますが、何らかの防腐対策は絶対必要で、各社必ず実施しています。


4 シャンプーの菌対策

製造工程の菌対策は加熱処理が有効ですし、使用中の対策のために入れた防腐剤なども効果を発揮しますので特に困難ではありません。
使用中の菌の対策が主体となりますが、水分が多いので菌が繁殖し易い面もあります。特に天然系の素材を使用したものはそれだけ技術的には難しくなります。防腐剤を使う例が多いですが、他の成分の抗菌効果を利用して菌をコントロールすることもあります。
使用中に菌が入らないような容器を使うのも一つの方法で、逆止弁(空気が逆流しない)付きチアパック(フレキシブルなアルミパック)は効果的です。一部使われ始めましたが、今後の伸長が予想されます。
同じように空気の入らないエアレスボトル、逆止弁付きフレキシブルチューブなどがありますが、コストが高いのでシャンプーには向かないと思います。


5 防腐剤の皮膚刺激性、アレルギー性

表示指定成分の項で説明したように、防腐剤は表示指定成分の1/3を占めていますのでそれだけアレルギーを起こしやすい側面があります。一方、約100品目の表示指定成分のうち、洗浄剤は4品目、保湿剤は2品目ですから、洗浄剤、保湿剤でありながら、ある程度の防腐効果(抗菌効果、制菌効果、靜菌効果などとも言います)のあるものを上手く使うのも一つの方法です。
また、防腐剤などを使わないで、容器の工夫で対応するのは刺激性、アレルギー性を避けるためにとても有効です。無添加化粧品で知られるF社が、最初にアンプル入りの化粧品を発売してヒットしたのはこの容器の工夫の一例です。


6 防腐剤及び防腐効果を持つ化合物

1.合成系
防腐剤として定義され、薬事法で配合制限が指定されているものにパラオキシ安息香酸エステル類(いわゆるパラベン)、フェノキシエタノールなどがあり、パラベンが最も多く使用されています。
パラベンは旧・表示指定成分でもあり、まるで毒物のように言われることもありますが、それ程の問題はなく、広い範囲の菌に効果のあるすぐれた防腐剤です。
ただ、特に低刺激性・低アレルギー化粧品を追究する時は、工夫次第で他に方法がありますので避けた方が良いと思います。
防腐剤とは定義されていませんが、防腐性能を持つ保湿剤(ペンチオール、BGなど)を使う例もあります。

2.天然系
防腐剤として定義され、薬事法で配合制限が指定されているのはフェノキシエタノールくらいで、旧・表示指定成分に該当するものはありません。
防腐剤とは定義されていませんが、防腐性能を持つコンディショニング剤(キトサン)、洗浄成分(脂肪酸エステル類など)を使う例もあります。
脂肪酸エステルは“菌はお肌の守り神”に書いたような脂肪酸エステルと同類のものですから、ある程度菌をコントロールしながら皮膚への影響が少ない利点がありますので興味ある材料といえます。
ただ、コストアップとなるのが難点です。

3.合成系か天然系か
天然系はある程度効く菌の範囲が狭く、合成系の方がやや広い範囲に効くように作られているようです。
天然系で安全性の高い物が求められるようになってきましたが単純に天然系だから安全で、合成系だから怖いということはありません
しかし、一般に天然系の方が安心感を持ってもらえるようで、現にフェノキシエタノールは合成系として毛嫌いされることもあります。
ここでは敢えて天然系にも分類しました。
もともとフェノキシエタノールは玉露茶の成分として最初に見出された化合物です。今日では合成法により作られているだけのことです。
同じように安息香酸も植物から見出され、今では合成されています。
この例のように天然系とか、合成系とかで区別することは意味がないことがおわかりいただけると思います。


7 評論のための評論に注意しましょう

ある本で、“防腐剤無添加と言いながら、他の成分で防腐効果を出している。これではまるで詐欺みたいなものだ”と書いている評論家がいます。いかにももっともらしく、歯切れ良く聞こえますが、物事の本質を理解しない、空論といえます。
防腐設計の目的は菌をコントロールしてお客様の肌を守ることです。防腐剤もその一つですが、刺激になることもありますので防腐効果のある保湿剤、洗浄剤などで低刺激性、低アレルギーを実現して行くのは、お客様の肌を守る最良の方法の一つです。
目的を達するための手段は色々ありますから、それぞれの状況のなかでベストと思われるものを見出すべく、化粧品技術者は日夜努力しています。
もの作りの心、現場を理解せず勝手な評論をするのは困りものです。


戻る Topへ